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2013年3月20日 (水)

県議海外研修旅費返還訴訟=私事旅行疑念やむなし=請求は棄却

 2013年3月19日午後2時、甲府地方裁判所にて林正宏裁判長が言い渡した判決文は、「主文、原告らの請求をいずれも棄却する。訴訟費用は原告らの負担とする。」わずか1分にも充たないものでした。

 「えーっ!!」「どういうこと?!」という声があちこちから上がりました。

 全面勝訴とはいかないまでも、議員という立場では、非常識な旅程に対しては返還命令が出るのではないかと期待していた私も、ひどく落胆しました。

 傍聴席32席は全部埋まり、外ではその倍にも上る方たちが待っていてくださいました。私は報告集会準備のためその方たちと弁護士会館へ向かいました。山本大志原告代表と、声明文を読み上げる石川原告それに弁護団全員は、判決への評価と声明文作成のため、別室へ向かいました。

 報告集会の会場は大勢の方たちでいっぱいになりました。声明文ができるまでの間、集会では原告5人が各々に皆さんに感謝の気持ちと、この裁判を戦ってきた思いを述べました。

 また、20年前に県議の海外視察に知事が餞別を渡したことに対して返還を要求した住民訴訟にかかわった方から、その勝訴への道のりについて聞きました。

 住んでいる地域で、不当と思われる公金支出がされていること、県議が地元でその特権を振り回していることなどがフロアから報告されました。

 3時近く、弁護団、原告代表らが、会場に姿をあらわし、代表の挨拶の後、声明文が読みあげられました。判決に対する原告声明

 「本判決は実質的には、税金を使った私的な観光旅行である“研修旅行”を認める結果となっており、不当極まりないものである。しかし、判決中、報告書を作成しない、その後の議員活動に反映させようとしない、公金を使用したにもかかわらず活用しようとする意識や熱意が希薄である、など旅行全体の不十分さも随所に指摘されている。」として、判決文を一部を紹介し、今回の裁判の意義について皆で共有できました。

 会場には報道各社がつめかけました。記者から改めて判決に対する見解を聞かれて、山本代表は、「もう少し踏み込んだ判決をしてもらいたかった、裁判所の限界を感じる。しかし、司法の場で、県議の言動が強く非難されていることなど、訴訟の意義は大きいと思う。」と答えました。

 会場から、「私たち主婦は、1円でも節約しようと生活している。一方で、県は難病患者の医療費窓口無料の廃止を提起して医療費削減を狙ったり、国保料、介護保険料の値上げを押し付けている。怒り心頭だ。マスコミは県民のこうした声を反映し、正しく判決の内容を伝えてほしい。」と訴えました。

 またある男性からは、「この声明文は甘いのではないか、書き改める必要がある。」との発言がありました。

 判決全文を入手した私は、帰宅後57ページ上る文書を丁寧に読みました。判決全文

 なぜ棄却にしたのか。

 アメリカ視察、エジプト等視察ともにおおむね以下のように述べています。「研修の行程は、一部においては研修目的との関連性が必ずしも明確でないものがあるものの、そのことによって本来の視察目的の調査が阻害されたり、視察行程が不当に延びたり、視察に要する費用が著しく過大になるといった事情も伺えないことから、全般にわたって視察目的に適ったものということができる。よってアメリカ研修、エジプト等研修への議員の派遣が裁量権を逸脱または濫用したものとは認められず違法であるということはできない。」と。

 研修目的や行程について、議員の報告書や証言ではきわめて不明瞭なことを、裁判所によってこれを補完、強化してもらったのではないかという印象を私は強く持ちました。思わず一人で苦笑してしまいました。

  読み進むにつれて、各視察において裁判所は議員の姿勢について厳しく非難している箇所に行き着きました。

 まずアメリカ研修、「報告書には研修で訪問した施設の概要や統計データ等が掲載されているにとどまり、山梨県における観光行政および現状での課題、研修で得た経験が前期課題を改善するためにどのように役立てられるかなど、研修の具体的な成果がなんら考察、報告されていないのであって、これらを県政に活かすことが前提となっている研修の趣旨に照らせば極めて不十分な内容である。このことに加えて、証人山下が、アメリカ研修から2年が経過しているにもかかわらず、県政への具体的な方策をこれから検討するなどと証言し、研修の成果を踏まえた具体的な提言等を行った形跡が見受けられないことも考え合わせると、研修を行った議員らには、公金を使用したにもかかわらず、その成果を最大限に活用しようとする意識や姿勢が希薄といわざるを得ない。その意味で、研修が視察に名を借りた私事旅行だったのではないかとの懸念を抱かれてもやむをえない面があり、原告らの主張にも首肯しうる点がある。」

 次にエジプト・トルコ研修 「施設の概要説明の項目等で、他のウェブサイトに記載されている内容と酷似している部分が複数あり、視察先についても何ら報告されていないものが多く、さらには視察内容を県政にどのように役立てるかに関する具体的な考察がまったく記載されていないなど極めて不十分な内容である。証人堀内は、複数の視察先について、行ったことさえ覚えていないなどと証言しており、この点に照らしても・・・ (以下アメリカ研修への言及とほぼ同じ)」

 そして違法性がないとの判断について以下のように述べている。

 「研修の目的は議員の活動と関連性がある正当なものであり、視察の行程も不相応なものではなかったことに照らせば、これらの海外派遣に公費をし要素いたこと自体は違法とはいえないのであり、その具体的な成果を詳細に記載した報告書を作成せず、その後の議員活動に反映させようとしない議員らの姿勢は、県政に対する深い問題意識と高い見識が期待される県会議員としての熱意不足の誹りを免れず、政治的非難の対象となることは否定できないものの、そのことは、法令に定める議員派遣の要件を満たさない違法な公費の支出であったか否かとはおのずから別個の問題とみるべきである。」

 私は考えます。裁判所の言う「政治的非難の対象になる」ことが、抽象的なことではなく、私事観光旅行として疑念をもたれる具体的な「視察」行為をして言及されているのにもかかわらず、違法としないとはどういうことか、憲法に定める地方自治の本旨にもとるものではないのか、私たちの住民訴訟の棄却の不合理さについて、素人なりに引き続き追及したいと思います。

 同時に、「政治的非難の対象」となっている研修そのものに対して、政治的に追及していくことの重要性を、くしくも裁判所から示唆されたと考えます。 

 問題の多い「海外研修制度」そのものを議会自ら廃止する決断をしてもらいたい。この訴えと運動を早急に強めていきたいと思うのです。

 

 

 

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